パソコンを使っていて、とあるフリーソフトをインストールするも思った様に動かず、付属のテキストに書かれたマニュアルを読んでも使い方がよく解らない。
色々頑張ってはみたものの全然動かないままだったので、パソコンに詳しい知人に電話したときのこと。
私『なんとかパソコンにインストールまではできてんけれど、それで文章を書いてて4ページ以降、ページがない状態なんやけど、どうしたら良いかわかる?』
知人『エンター、何回も押してみて下さい』
私『あっ、ページ増えた。エンター押し続けたらなんぼでも行ける。20ページくらいまで行けた』
知人『それで大丈夫です。それで、100ページまで行ったら玄関のインターホンが鳴ってオッサンが来ますけど絶対に出ないで下さい』
私『わかった。え〜100ページを越えるとピンポン鳴って、オッサンが・・・』
僕は真面目にメモを取りながら知人の話を聞いていたので、途中まで知人のボケたことに気付かなかった。
ボケツッコミの才能のある人なら、すかさず『変なオッサンなんか来るか!』とか「誰が来んねん!』とか『いやオッサン何しに来んねん!』とツッコミ面白い感じにできたことだろう。
だけどボケツッコミの才能が無い私はなにも返してあげられませんでした。知人には申し訳ないことをしてしまったと思う。
電話を切った後はフリーソフトへの文章の打ち込みに集中した。
いつの間にか朝が来て、そろそろ寝ようかなと思った頃に、ピンポン、とインターホンが鳴った。ページを見ると100ページ。
知人が言っていた例のオッサンが来たようだ。知人には絶対に出てはいけないと言われましたが、気になったので足音を立てない様に細心の注意を払いながら静かに玄関まで行って、のぞき穴から外をのぞくと、
『100P』という文字が入ったハチマキを頭に巻いた変なオッサンが、巨大な『エンターキー』を両手に抱え肩で息をしながら立っていた。
玄関の分厚いドア一枚を挟んで、僕はしばらくオッサンを見ていた。
たまたま私の家の前を通りがかった新聞配達員にオッサンは『巨大なエンターキーを押して下さい』と眼で促していた。
新聞配達員は「えー」っとちょっと躊躇うような態度を見せましたが、結局はそのエンターキーを押した。オッサンは『ありがとうございます』と小さな声でお礼を言い小走りで帰ってしまった。
僕がパソコンの前に戻ると、101ページ目が出ていました。
それならば巨大なエンターキーを自分で押しても良かったかもしれないなと思った。そんな妄想をした。