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喫茶店の窓の外

映画を見にいった時のこと。

チケットを購入し時間を確認すると、上映まで時間があるので映画館側の喫茶店にコーヒーを飲みにいった。

その日は日曜日だからか店内は混んでいた。二人の人に順番を抜かされてようやく席に座れた。

窓際の席だった。結果的に順番を抜かされて良かったと思った。

窓からは色々な風景が見える。お店の人にアイスコーヒーを注文して、カバンから取り出した文庫本を読んで時間を潰そうかと思っていたけれど、窓の外の風景に気を取られてしばらく眺めていた。

停車している空車タクシーの窓を何度もノックしているが気付かれないおじさん。運転手は眠っているのだろうか。周囲にはタクシーらしき車も見当たらないので、ノックおじさんは諦めずにノックを続けていた。

チェーンに繋いだ自分の財布を蹴りながら走る少年。僕は思わず「あっ」と声を出してしまった。少年はカードのようなものをまき散らしながら走っていたのだ。しかし少年はその事態に気付いていない。

すると、偶然通り掛かった老婆がそれを拾い、少年に渡そうと追いかける。だけど老婆と少年では走る早さは違い過ぎていた。二人の距離は開くばかりだ。

そんな彼等の行動に注目していると、そのまま少年は角を曲がり僕の視界から消え、やがて老婆も僕の視界から消えた。

老婆が少年にカードを渡せるのは何年後だろうか。出来ることなら、その時は僕もその場に居合わせたいと思った。

チラシを持っているが誰にも配らない女性もいる。不思議な光景だけど、まぁたまたま配っないだけんかなって思っていたけど、子供から大人まであらゆる世代の男女が彼女の前を通り過ぎて行ったが彼女は誰にもチラシを配っていなかった。この世のものではない何かに配るチラシなのだろうか?

帰る時、僕も彼女の前を通らなければならない。誰にもチラシを配っていないのに、僕が通り過ぎた時にはチラシを配られたらどうしよう。僕はこの世のものなのに。いや、見た目の怪しさからこの世のものとは思われる可能性もあるけれど。

外の景色を眺めながらそんなことを考えていた。

アイスコーヒーの氷も溶けてるし、恐らく二口目までは美味しくないだろうな。

けれど結局全部アイスコーヒーを飲んで、レジでポイントカードを出したのだが店員さんは全く気がつかず、僕のポイントカードは寂しそうに、しばらく机の上にあった。

恥ずかしくなったのでバレないよう、こっそりとポイントカードを財布にしまい、何もなかったように店を出た。

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