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食堂のデザートメニュー

よく行く、安い食事処にて腹を満し食後に水を飲んでいたら、壁に貼られたデザートのメニューが気にかかった。

どうやら身体があっさりとしたものを欲しているようだったので、何か一つ注文しようと決めたのだが、『柚子シャーベット』や、『ブルーベリーなんちゃら』に交ざって、『フランボワーズソースアイスクリーム』なるものがあった。

『フランボワーズソース』とは一体何だろう?と思い、恥を忍んで若い男性店員に聞いてみた。

僕は出来るだけ偉そうに成らぬよう、また、悪ふざけで聞いていると誤解を受けぬよう、言葉と声のトーンに気を配り、『すみません、このフランボワーズソースとは、あの〜、どのようなソースでしょうか?』とたずねた。

すると、男性店員は明らかに周章狼狽し、『少々お待ち下さい』と全て言い終らぬ内に、厨房の奥へと消えて行った。

気のせいだろうか?店内が一気に恐ろしいほどまでの静寂に包まれたような気がする。

偶然訪れた村で禁句とされている、王の名を口にしてしまい村人達に家の門を次々と閉ざされ、闇の中で一人取り残された男の不安と同様の心持ちで、僕はコップに残った水を取り敢えず飲んだ。

しばらくすると、先程の男性店員が戻り、僕の席の横に立った。

そして男性店員は、『こちらがフランボワーズソースです』と言って、よくマヨネーズやケチャップが入っているようなプラスチックの容器を僕に見せた。

何ということだ。ソースそのものを見せられても僕は何も理解することが出来ない。

『あ〜これかぁ、これなら安心だ。じゃあ、これで』とは成らないのである。

確かに、その容器には何語であるか判然としないアルファベットで、恐らく『フランボワーズソース』と読むべき文字が並んでいた。

しかし、せめて原材料を見せて戴きたかった。そうすれば、『フランボワーズ』の主な成分が何であるのか掴むことが出来ただろう。

僕は、『グッ』という声を無理やり飲み込み、『あ〜なるほど』と応えると、男性店員は再びスタスタと厨房の方へと戻って行った。

結局僕はデザートを食べず、表に出て自動販売機で幾度となく飲んだ経験がある缶コーヒーを買い、『これこれ』と思いつつ帰った。

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