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1.20.2024

輪ゴム拳銃

輪ゴムで遊びながら商店街を歩いていると、僕の前を歩く男の傘が、前から歩いて来た四十代くらいの女性の頭に当たった。

すると女性は露骨に嫌な表情を浮かべて振り返り、何も気付かずに行ってしまった男の方に向かって歩き出した。

女性は男に苦情を言いに行くのだろうと思い見ていると、女性はそのままの足で迷わず電気屋に入って行き、電池コーナーを物色しだした。えっ、これってどういうことだろう?

腹が立って振り返った瞬間に探していた電気屋が見つかったのだろうか?それだけのことによってさっきまでの腹立たしい感情も消えたのといんだろうか?沸き上がって来た感情は何処で処理をするのだろう。

さっきまで怒っていたのに、もう女性は電池を手に取り二個入りにするか四個入りのパックにするか思案している。

なんでもないといった感じで電池を物色する女性のその姿はとても不思議だ。電池を食うと怒りを消化できる人なのだろうか。

そんなことを考えながら歩いていると僕を追い越して行く人の傘から飛び出した骨の先端に付いているキャップが僕の真ん中で分けた髪のセンターラインを優しくなぞって行き瞬間的に体温が低下したような感覚になり、なんか情けなかった。

その時には輪ゴムでの拳銃の作り方を手が思い出していて、いつでも発砲できたが、もちろんそんなことはしない。そんなことをしたら馬鹿だと思われるからだ。そんなことをして実際に誰かに当たったら怖いし怒られるからだ。

それに独りで居る時に思い付いたことを、そのまま誰かに持って行って関わろうとすると大概は上手く行かず変な感じになるからだ。

僕は輪ゴムの拳銃を空に向かって、撃たない。

なぜなら、それはなんか古いからだ。そしてなんかキツいからだ。そして、なんか悪寒を感じてしまう行為だからだ。

そんな気分が沸き上がってきた僕は、逆の手のひらに撃とうかなと思った。それが一番自然に思えたからだ。

だが、結局はどこにも撃たなかった。撃たずに指から外した輪ゴムをズボンのポケットにしまい込んだ。そんなことを言い出したら本当にきりがない。

自然に振る舞おうと意識するのは凄く不自然だ。書くこと自体も不自然だ。色んな事のやり方を忘れてしまった感覚に陥ってしまった。

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